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13. 透視図と射影変換

13.4 射影変換に関する二三の問題


13.4.1 あおりが効くカメラによる撮影

 射影変換の数学原理を説明するとき、第13.2節では、カメラ位置を固定しておいて、被写体が描かれている面の方を回転させる幾何学モデルも説明しました。これとは逆に、カメラの方を、その位置で回転させて撮影するモデルを、ここで説明します。これも、図13.2または図13.3の透視図法で見るような、世界座標系を視点座標系で見直す変換です。元の平面図形は、x軸方向を見ている立方体の面上にあります。カメラの回転操作をすると、はじめにカメラの視野中心に捕らえていた被写体の像が、変形し、フイルム面上で移動し、場合によると一部、または全体が視野中心から外れます。ワイドレンズを使えば、全体像をフイルムの端に偏って撮影できますが、反対側に無駄な領域がでます。写真屋さんは、レンズの方をフイルム面と平行に移動できるような特殊なカメラを使うことがあります。このようにする撮影技法を「あおり」と言います。この方法で撮影した写真の例は、第7章の図7.4で紹介しました。あおりの効くカメラは、カメラを構えた状態でレンズ位置を上下に移動できます。レンズとフイルムとの位置関係は相対的ですので、ここでの射影変換のカメラモデルは、カメラを視点位置で回転させておいて、フイルム面をレンズに対して上下と左右に平行移動させて像を収めます。この投影は、斜投影に似ていますが、斜投影ではありません。理論的な斜投影は、レンズの焦点距離を無限大にした望遠レンズを使い、フイルムの端の方を使う投影です。
2009.1 橋梁&都市PROJECT

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