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4. 三次元的に扱う柱と梁

4.1 座標系の解釈と選択


4.1.1 座標系は恣意的に決めること

 構造材料は、梁や柱のような細長い部材形状に加工して、力(内力)を一方から他方に伝えるように使います。最も基本的なモデルは、トラスの弦材のような、直線状の骨組み部材単位を組み合わせて空間を構成します。一定の断面形状で或る長さを持たせ、両端で別の部材と繋ぎます。この個所を格点とします。外力は、格点で作用させ、部材長さの途中では作用させないとします。しかし、梁は、横向きに外力を持たせて直線状または曲線状に連続させます。この場合は、微分的な長さで単位部材が繋がった、と考えます。この細長い部材の任意の位置が区別できるように、局所座標系を、問題に合わせて恣意的に(適当に)決めます。適当な間隔の座標点で解析するときは、番号を使うこともあります。例えば、トラス構造では、格点の位置の座標が必要ですが、格点番号で代表させることもします。トラスの弦材は、長さ方向の任意の場所で応力や変位を求める必要がありません。トラス部材の両端、格点番号の対を使えば、全体の中での相対的な部材位置が分かります。梁の場合、長手方向も含めた各部の位置は、大元となる三次元空間の座標系を使って位置を決めます。こちらを世界座標系と言います。局所座標系は、世界座標系のコピーを使うのが普通です。そして、局所座標系と世界座標系との関連を決めておきます。構造物が変形すると、局所座標系で与えられた位置が世界座標系の中で移動します。世界座標系を、例えば代数幾何学的に右手系の(x,y,z)と考えるときは、(x,y)座標の向きを水平面にし、z軸を上向きに決める、いわゆるデカルト座標を使います。しかし、橋梁工学では荷重の作用が主に下向きの力であることから、変形計算の理解に便利なように、一つの座標軸を下向きに正とする約束(左手系)を使います。平面構造力学ではz軸を考えませんので、y軸記号を下向きに正とする使い方もします。正負の向きの約束は、従来の専門の習慣がありますので、数学的な解析のときに混乱する原因の一つです。なるべく、図を併用して説明を補うように留意します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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