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2. 論理演算

2.4 変数を二つ使う演算


2.4.11 規則や法律を論理的に作文する文の構造

 人間社会では、多くの約束事を決めています。これが法律や規則です。それを文に表すとき、正しい理解が得られ、また、矛盾のないようにまとめるには論理学の素養を踏まえます。これらの文では、特別な用語や言い回しがあります。また、その文を理解するときの概念も使われます。まず、はじめに、必然可能の概念の説明をし、それを使い分けるときの対当関係を図式に示すことから始めます。

 論理学での必然とは、「必ずそうなる」ことを言います。数学での式の結果や、論理式での結果のような場合が論理的な必然です。しかし、分野によって解釈が少し異なるものがあります。道徳的な必然は、当為と言われ、当然なすべきものを指します。現実的な必然は、偶然に対するもので、「太陽は東から昇る」などを言います。「必ずそうなる」の反対が「必ずそうならない」です。「必ずしもそうならない」とは、全体に対する部分の意味を持ちますので、帰属の関係です。

 可能とは、論理的に矛盾がないことを言います。必然の場合には結果の予測がただ一通りであるのに対して、可能では複数の結果が予想されるものの中で、一つを指します。「可能である」とは「そうなることもある」のことです。この反対は小反対であって、「そうならないこともある」と言い分けます。

図2.9 可能と必然の対当関係の図式      図2.10 命令と許容の対当関係の図式

…が必然である>

反対
←−→

…でないことが
必然である

 

帰属大小)

矛盾対当

帰属大小)

 

…が可能である
…があり得る

←−→
小反対

…でないことが
可能である

 

…すべきである
(不許不)

反対
←−→

…すべきでない
(不許)

 

帰属大小)

矛盾対当

帰属大小)

 

…してもよい
…できる(許)

←−→
小反対
…しなくてもよい
(許不)

 必然と可能とは、「…になる」の言い方の区別です。「…をする」の言い方を区別することが、命令許容です。「…しなさい」が命令、「…してもよい」が許容です。「…しなさい」の言い換えは、「…せよ」「…すること」「すべきである」などの言い方になります。英語では、動詞の命令形のほか、shall, must   の助動詞を使います。「…しなさい」の否定が禁止です。日本語では「…してはならない」の否定形を取ります。「…してもよい」の言い換えは、「…することができる」「…することが許される」などとなります。英語ではshould, it is allowed, may, can などを使い分けます。日本語の命令文と許容文では、主語を明示してなくても二人称です。英語では、主語に日本語の目的格を使うこともあります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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