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2. 論理演算

2.4 変数を二つ使う演算


2.4.10 集合を扱うときの論理文の構造

 そもそも、代数式は、言葉(文)で説明することを記号の並びに置き換えたものです。逆に、式を文に直して読み上げることもします。論理学で扱う文単位は名詞を主語としますので、その名詞に数の形容詞を付ける言い方を必要とします。具体的に数を使うのではなく、大小、多少の区別ができるとして、「すべて」と「部分(或る)」二つの対立概念に分けます。この数量形容詞は、抽象的な性質をもった言葉です。これに加えて、「肯定・否定」の二つ対立概念を組み合わせると4つの文形が得られます。例文を加えて、下の4つの言い方を示します(第1.1.4項,命題を参照)。
   A; 全称肯定命題、「すべての花は、赤い」
   E; 全称否定命題、「すべての花は、赤くない」
   I; 特称肯定命題、「或る花は、  赤い」
   O; 特称否定命題、「或る花は、  赤くない」
この4つの文を記号式に表し、さらに相対的な意味関係を図2.2に倣って図2.4のグラフで示します。

図2.4 定言命題の反対・小反対・矛盾・内含の対当関係及び実例(人、物が対象)

(A) :  ∀xAx

反対
←−→

(E) 〜∀xAx

 

内含(大小)

矛盾対当

内含(大小)

 

(I) :  ∃xAx

←−→
小反対

(O) ∃xAx

 

すべての花は
赤い

反対
←−→

すべての花は
赤くない

 

内含(大小)

矛盾対当

内含(大小)

 

或る花は赤い(赤
い花が存在する

←−→
小反対

或る花は
赤くない

[備考]: 縦方向の文は上から下向きに見る内含の関係。集合論では包摂または帰属と言います。
   左右方向は互いに否定の関係ですが、反対小反対の用語で区別をします。
   対角線同士の関係は、内含の関係で見れば矛盾です。これを矛盾対当と言います。

図2.5 時間の長短を数形容詞で扱うときの言い方

いつも…である
(常)

反対
←−→

いつも…でない(常不)

 

帰属

矛盾対当

帰属

 

ときどき…であ
る(不常不)

←−→
小反対

ときどき…でない(不常)

 

[解説]
文章を書くとき、4W1Hを明らかにすることが必要です。「いつ(時間)」、「どこ(場所)」、「だれ(人)」、「なに(物)」に加えて、Hにあたる「どのように」を使うときの対当関係を例にして、以降の幾つかの図式を示します。対角線関係は矛盾対当です。同時に使うと矛盾になるので注意します。



図2.6 場所の広さを大小関係の数形容詞で扱うときの言い方

どこでも…
である

反対
←−→

どこも…
でない

 

帰属

矛盾対当

帰属

 

どこかが…
である

←−→
小反対

どこかが…
でない

 

[解説]
  この図式は、場所の情報を含む文で、広さの概念を使い分けるときの言い方の図式です。



図2.7 数の大小を数式で言う時と言葉で言うとき

n> 0

反対
←−→

n< 0

 

帰属

矛盾対当

帰属

 

n≧ 0

←−→
小反対

n≦ 0
 
nは0を超え
(0を含まない

反対
←−→

nは0未満である
(0を含まない)

 

帰属

矛盾対当

帰属

 

nは0以上である
(0を含む)

←−→
小反対

nは0以下である
(0を含む)



図2.8 複合命題の対当関係の図式

PそしてQ
(連言)

反対
←−→

Pでもなく
Qでもない

 

帰属大小)

矛盾対当

帰属大小)

 

PまたはQ
(選言)

←−→
小反対

PでないかQでない(非両立)

 

(P∧Q)

反対
←−→

 

帰属大小)

矛盾対当

帰属大小)

 

(P∨Q)

←−→
小反対

    言葉で言うとき                          [記号で表した場合]

[解説]
複合命題、特に、連言と選言との対当関係を示す図式です。表2.6の演算式相互の関係を示します。この図式の関係は、文章において否定文と組み合わせて接続詞「かつ」と「または」を使い分けるときに、論理的に厳密に吟味するときに必要な知識です。この図式には、論理則の幾つかがふくまれています。例えば、矛盾律は、対角線どうしの要素について、下の恒真式が成り立つことです。
    [(P∧Q)∨()]
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