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5. 錯覚と錯視を避ける作図技法

5.2 隠れ線と隠れ面


5.2.4 幾何モデリングの作図

 図5.11に示した形状は、パズルとして売られていいました。全体は正6角柱が12本接するように重なった構造ですが、干渉する部分があります。切り込みを入れた6角注を組み立てることがパズルの目的です。第2章:図2.2に示した寄木細工も動きを加えて完成させますが、それに比べると、角度のついた部材の組み合わせは相当に複雑です。この構造を頭の中で想像して図面に描こうとなると手を上げてしまうでしょう。これは、幾何モデリングの格好の題材であって、そのソフトウエアはGEOMAPとして発表してあります(あとがき参照)。16ビットのパソコンの時代には、メモリの制限がありましたので、この程度のモデルの作成が複雑さの限度でした。当時のパソコンでは、立体構造の幾何学的データの計算に3分程かかり、さらに隠れ線処理をした図5.4のグラフィックス線図を作成するのに7分ほどかかりました。この図では、隠れ線と隠れ面の処理に工夫を凝らしてあります。この立体図形は多面体で構成され、辺の図形が面の形状を表しています。この辺が、手前にある面の裏側に、接することなく入る個所では、その個所に僅かの隙間を空けてあります。この図では、或る面の一部が、手前にある面で隠されることもありますので、隠れ面と接している面とを見分けるような作図法をしています。図5.12は、図5.11の一部を拡大して隙間が分かるように示したものです。
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図5.4 幾何モデルとして作成したパズル______図5.5 隠れ線の処理をした辺の拡大図

 この作図をするソフトウエアは、いわゆるオブジェクト指向プログラミング(object-oriented programming)で作成してあります。ここでのオブジェクト(物:object)は、立体図形のモデルと、その投影図に変換した平面的な地図状のモデルです。頂点・辺・面ごとに幾何学的また位相幾何学的なデータを持たせてあります。これら、オブジェクトのプロパティ(属性:property)と言います。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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