目次ページ  前ページ 次ページ

3. 寸法と尺度

3.3 実寸法と呼び寸法


3.3.1 物理的な長さは分からない

 長さを正確に測ることは、物理的にかなり難しい問題があります。実際面では、温度の影響で材料寸法の伸び縮みがあります。長さの測定器具は、伸び縮みの小さな材料で製作しますが、基本的には或る標準温度(通常は20℃)で使います。日本では竹の物差しが温度変化で長さ変化をしないとして信用されています。布製またはスチール製のテープは、温度の影響も受けますが、引っ張って使うときの張力でも長さが変わります。工業製品は、幾つかの部品を別々の場所で製作して全体を組み立てることもしますので、同じ寸法仕様であっても、別の環境で測ると微妙に異なった結果になることがあります。これを含みにした寸法指定が精度です。大きな構造物では、温度変化や弾性変形などの累積が大きな寸法変化になることを計算して、対策を講じます。そうであっても、別々の場所で長さを測るテープなどは、同じ場所に持ちこんで条件を整えて長さの比較をします。これをテープ合わせと言います。この作業は、どちらかが物理的に正確であると言うのではなく、相対誤差があるときの解決方法を約束するものです。橋梁では、未だ架かる前の空間での支間距離は、テープを使って直接測ることができません。地上で、三角測量の基線長さの測定に使ったテープと、工場製作で使うテープとの比較が重要です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

前ページ 次ページ