目次ページ  前ページ  次ページ

2. 作図と製図

2.2 印刷と複写


2.2.3 製図には特別な用具が工夫されてきたこと

 複写機が便利に利用できなかった1920年代までは、設計図は、厚手のケント紙に烏口と特別なペンを使って墨で清書しました。元の設計図が一つしか無くて、それを利用する分野が複数あると、閲覧を共有するか、何がしかの小部数のコピーをしなければなりません。銅版などを使う印刷による複製は費用が嵩みますので、手書きでコピーをします。これをトレース(trace)すると言い、トレース専門の図工(トレーサ)が当たりました。このとき、かなりの頻度で転写の誤りが起こります。青焼きまたは白焼き の複写機が利用できるようになって、作業に必要な文書や設計図をトレーシングペーパーに書くようになりました。それに合わせて、細い線も引ける硬さと、複写が鮮明に得られるような、複写機の紫外線を通し難い材料の芯を持たせた鉛筆、またはシャープペンシル(商品名です)を使うようになりました。鉛筆で書く線図は、線の太細を描き分けることが難しいので、濃淡が区別できるような硬さの芯(B〜H)で使い分けをします。清書を考えるときは、改めて墨入れで図面をトレーサに作図してもらうこともしました。欧米では、太さに合わせて文字や線が書ける製図用の特殊万年筆が製図用文房具として使われていました。ここまでの段階は、手書き作業で製図をすることを考えた製図用具です。コンピュータ制御のプロッタを製図道具として利用するようになった最初は、鉛筆またはインクペンを持ったキャリアを、作図用紙を載せた台の上を移動させる機構で、文字や線を描かせました。これがCADの始まりです。当時は自動製図と言いました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

前ページ   次ページ