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3. 寸法と尺度

3.2 寸法単位利用の変遷


3.2.3 寸法数値は正の整数を使う

 寸法を言うときの習慣は、小数点を含む実数ではなく、単位ごとに整数を使うか、補助的に比を表す分数を使います。負の数も、また引き算を含む表現も使いません。数学の教育が進みましたので、小数点付きの、例えば、円周率を3.1416のように実数表示で言うのが正しいと主張する人もいます。しかし、実数表現の言い方は歴史が浅く、普通には、整数とそれに合わせた単位を使います。例えば、距離と長さを言い表すとき、昔風には漢数字を使い、五里十二丁二十五間、五尺二寸三分のように位取りごとに単位の呼び方を当てます。アラビア数字を使い、メートル法で言うときも、例えば小数点を使う1.35mと言うよりも、1m35cmまたは 135 cmのようにします。1より小さい小数を比で言う場合、10進数を使う日本では、例えば0.352には、3割5分2厘の言い方があります。英米では、1インチ未満では3/8インチのような分数表現を使います。ユークリッド時代、実数は、すべて整数比の分数で表現できると考えていました。例えば、円周率は無理数ですが、その近似値には22/7が実用されていました。工業設計では、寸法を正確に表す必要がありますので、実数表現を使うこともします。しかし、複数の単位記号を混用することを避けます。工業製図は、寸法はmm単位で表記するのが標準であって、この場合には単位記号の記入を省くことができます。大きな数に整数を使うと、文字数が増えて、直観的に理解することが難しくなります。3桁の数単位で区切ると見易くなります。その区切り記号(delimiter)にスペース(space:空白)を使うのが標準ですが、コンマ(,)も使います。しかし、コンマを小数点の意義で使う国もありますので注意が必要です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2012」

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