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22. 数値解析とグラフ化

22.2 順序グラフの図形的な特徴


22.2.2 普通は非対称のグラフになる

 前章の図21.3は、橋梁上を自動車が通過するとき、橋上で加速度振動を三方向(橋軸方向・橋軸直角の水平動、上下動)で測定したデータの一例です。加速度データから、速度、さらには変位を得たいとするのは自然な要望です。加速度データの数値積分が、この章の主題であって、後の節で解説します。電気的なアナログ信号のままで積分する回路は種々研究されています。積分開始を指令して電子的に演算させるとき、最初の短い時間に、数学的に言う不定積分の定数項を回路的にすばやく補正してトレンドの影響を抑えなければなりません。また、演算実行中にも、何らかの撹乱を受けてトレンドが出そうになったのを補正しなければなりません。このため、非常に神経質な測定装置になり、実用的に安定した使い方ができません。したがって、加速度計側で回路を工夫するよりも、データを数値化して、数値積分で計算する方法が経済的ですし、便利です。上下動の加速度記録から二度積分して変位を求めれば、上下動の変位は自動車荷重の通過による静的な撓みに、振動が重畳した波形になるはずです。つまり、変位データの順序グラフを求めれば、点対称性が崩れ、全体としてグラフの基準線位置も上下にズレます。遡って、元になる上下動の加速度データについて順序グラフを求めれば、点対称性が崩れているはずです。これらの数値計算では、順序グラフの性質を理解しておくことが必要です。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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