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22. 数値解析とグラフ化

22.2 順序グラフの図形的な特徴


22.2.1 ランダム波は三通りのパターンがある

図22.1 確率過程から得られる3種類の順序グラフ
 前章の図21.3は、構造物の振動を加速度計で記録したデータを、オシログラム状に描いた例です。生のデータを再現していますが、見易くなるように幾つかの作図上の工夫があります。三段並列に並べたグラフが重ならないように、グラフの尺度を調整し、平均値を0にしてあります。全体は、A4の用紙を縦位置にしてプリントするようなレイアウトです。モニタ上でグラフを観察するときは、縦横の尺度を変えたグラフを表示することもできます。ランダムな性質が有る振動波形のデータから順序グラフを描くと、全体形状の傾向として図22.1のような3種類の基本的図形のどれかと似ます。理想的にランダムな確率過程の場合は、平均値が0で、上下に確率的に対称な振幅で振れると考えることができます。その順序グラフは、中央に対して点対称の図形です。実際の観測データから順序グラフを描くと、元のデータについて、幾つかの基本的な性質が読み取れます。
  • 図形(1)は、直線的な増加を示します。元の波形の数値は、最小値から最大値まで、ほぼ一様な分布を持った数値の集合です。電気信号で良く出てくる三角波や鋸波も、この形になることが容易に想像できるでしょう。不思議に思うでしょうが、プログラミング言語に準備されている乱数発生の数列から順序グラフを求めると、このような直線を描きます。理想的な乱数は、統計的に見れば、大小の数値が均等に分布する数の集合であるからです。
  • 図形(2)は、振幅の大きな振動がまばらに現れ、大部分が小振幅を示す場合です。心電図の波形や、地震波動のデータを長時間記録すると、順序グラフの両端の僅かな区間を除き、中央の大部分は0です。解析に取り出す区間を選んで、0の範囲を狭めるように波形の塊をサンプリングする解析と、全体を通した長周期の解析との二種類の見方を考えます。
  • 図形(3)は、周期性の強い定常な振動現象の順序グラフで得られます。グラフ中央を原点としたsin波形の±1/4波長と似たグラフを描きます。なお、周期的な繰り返し波形が三角であれば(1)になり、パルス上の波形であれば階段状の図形になります。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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