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22. 数値解析とグラフ化

22.1 離散的に扱う時系列データ


22.1.6 極値データはエネルギーの塊単位で数える

 大地震の回数は、地震動全体のマグニチュードをパラメータとして数えます。余震があっても、回数には加算しません。振動は、力学的に言えば、位置エネルギーと運動エネルギーとが交番する現象です。このエネルギーの時間的な総和、電力で言えばキロワットアワー(KWH)に相当する量を、地震全体ではマグニチュードで与えています。観測個所では、生活実感との関連を付けた気象庁の震度階で表します。個別の構造物については、振動の振幅と回数とを考えに入れたデータの扱いが必要です。その表れ方は、地盤と構造物の局地的な性質で千差万別の顔を持ちます。これを応答と言い、ここに耐震設計の種々の工夫が研究されています。地震動は、エネルギーの塊が地盤を通過する現象ですので、そのエネルギーがその場所で破壊の仕事に使われずに通り過ぎてくれれば被害が出ません。力学的な耐震設計の考え方には、対象地域の地震来襲強度の@再現期待値を推定することと、それが個別構造物に作用するA振動応答を仮定する、二つの不確かさを扱いますので、実際にどうなるかを断定的に予測できません。この対策の両極端の考え方は、一つが部分的な変形を許さない強度設計をすること、もう一つが柳に風式に受け流す方式です。霞ヶ関ビルに始まる超高層ビルの考え方は後者ですが、居住空間が横揺れをしてもよいのだ、とする常識の転換が必要でした。橋梁を通行する重量車両の影響も、二通りの見方をします。車両の全重量単位で数えるマクロの扱いと、部材に関しては軸重単位の積算するミクロの見方とがあります。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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