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22. 数値解析とグラフ化

22.1 離散的に扱う時系列データ


22.1.5 離散化する手続きも多くの課題がある

 地震を或る地点で観測すると、短い時間間隔に複数の繰り返し振動波形が表れます。極値解析に使う地震回数の数え方は、この波形の塊の全体が一単位です。そうするとき、最大振幅が現れた一つの地震を本震として数え、余震が幾つかあっても、その回数を加えません。しかし、個別の構造部材の設計に注目するときは、加速度波形の周期や振幅などの図形的な特徴に注目し、ピーク値の大きさと回数とを順序グラフ的に整理することも必要です。手作業で振動データのオシログラムを読み取るときは、時間軸に沿って振幅の極大・極小値を求めます。最大振幅の間隔、または、ある時間間隔に在る最大振幅の個数を数えることで、卓越振動数の大体の値が判ります。もう少し細かい解析をしたいときは、時間軸上に飛び飛びに現れる極大・極小値から、内挿法で等間隔のデータ並びに切り直し、スペクトル解析などに使います。ここで問題にすることは、最初の極大・極小値の集合を順序グラフに描いたものと、等間隔に切り直したデータから順序グラフに描いたものとは、同じ性質のグラフにならないことです。機械部品の疲労の見積もりをするとき、アナログ的な荷重履歴のデータから、荷重の極大・極小値の回数と順序グラフを求める必要があります。波形に含まれる細かな中間の繰り返し回数を積算しないように、極値だけを取り出す古典的なアルゴリズムには、遠藤達雄らが提案したRain Flow Method(1974)があります。デジタル技術が利用できるようになって、新しい局面が開かれてきています(山田健太郎)。なお、連続した波形データに含まれる細かな乱れを滑らかな波形に丸める方法は、一般的にはフィルタを通す、ウインドウを通すと言います。物理的な解析に使う意義よりも、グラフを観察するときの見易さを図ることの方に主な目的があります。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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