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14. 立体図形の射影変換

14.3 透視図に使う三次元射影変換


14.3.6 形状デザインに応用するとき

 射影変換は、数学としては非常に興味の尽きない問題です。代数式で表されている性質が、幾何学的にはどのようなモデルから導かれているかを理解すると、教養的な知識を満たす満足感が得られます。しかし、具体的に透視図を求めたいとなると、コンピュータのプログラミングに適するような計算式を提案しなければなりません。これが計算幾何学の課題です。第13章と第14章では、心ならずも実用を意識しない多くの代数式を紹介しました。平面図形の射影変換は、ある図形の原画を変形して転写する使い方をする方法として、デザイン作業に多くの応用が見られます。この変換は、原画の外形を表す四辺形を、転写する側に設定した四辺形に割り付ける形で、力ずくで変換する式を扱います。一方、立体図形の射影変換の数学的技法は、造形デザインに応用する環境を、いまのところ思いつきません。射影変換をさせたような造形をデザインしたいときは、最初に例示した図13.1〜図13.3のように見える6面体の形状を定義する方法を考えます。始めに、元にする図形の外枠を直方体としておきます。6面体は頂点数が8ですので、座標の対応を考えると3×8=24の条件式が必要です。この中には、面を構成する4頂点が幾何学的に一平面に載っている条件を含みます。射影変換を含む一般的な代数式は、式13.1の4×4マトリックスにある16個のパラメータを決めればよいので、8頂点の中の5点を選んで、はめ込み条件を決定します。具体的な計算式は、「CAD・CGのための基礎数学:共立出版:2000:付録E」を参照して下さい。パラメータは恣意的に決める自由度がありますので、消点に相当する位置(すぼみが収束する位置)を仮定して変換式を構成すると面白い結果が得られると思います。この試行は、筆者はいずれしたいと思っていますが、興味の有る方が挑戦してコメントを頂くことを期待しています。
2009.2 橋梁&都市PROJECT

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