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14. 立体図形の射影変換

14.1 トリックアートで扱う逆変換


14.1.3 一点を目指してすぼむ変形であること

 一般的な射影変換は、元の図形が一点を目指してすぼむような形状に変形する変換です。前章の図13.1〜図13.3に描いた透視図の説明は、消点の数で三つの投影法に分類しました。この図を見ると、立体図形のすぼむ方向が三方向にあるように誤解します。しかし、数学的には視軸が通る中央の一点だけを目指してすぼむ変形です。透視変換で得られた平面図形では、平行線の束が一点に収束するように見えますので、これを消点と言います。三次元空間の座標軸に平行する補助線の束を考えると、三点までの消点が得られます。しかし、水平面内に考えた、任意向きの平行線の束は、向きそれぞれに消点が得られます。その集合が図13.1〜図13.3に示した水平線です。図形全体がすぼむ方向の消点は、カメラの視軸が狙う、フイルム中央方向の一点です。フイルム面と関連させたカメラ座標系を考え、世界座標の中で、視軸方向を決めます。この視軸に直角に置いた切り紙上の図形は、視軸に直角な方向に切り紙を平行移動させても、この像の形状と寸法は変化しません。三次元的な射影変換は、遠くにある図形を小さく変形して(すぼませて)、視点側に近づけます。結果として、元の三次元図形は、視軸方向に縮む変形になります。図13.1〜図13.3は、立体図形の透視変換の説明に使うのですが、立体感を持ち込まないで、平面図形の変換として注目すれば、辺の成す角度が直角で構成された四辺形が或る方向にすぼむように変形する射影変換を表します。結果として、座標軸に平行な四辺形の辺が、延長で交わる消点ができます。平面図形の射影変換ではこの消点が二つまでできますが、三次元の射影変換では最多で三つあります。アフィン変換は、消点ができない変換です。
2009.2 橋梁&都市PROJECT

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