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14. 立体図形の射影変換

14.1 トリックアートで扱う逆変換


14.1.2 立体図形の射影変換は馴染みが薄いこと

図14.3:正六面体から台形への変換は射影変換である
 三次元の多面体を射影変換で別の三次元多面体に変換した、と具体的に示すことができる例は、あまり馴染みがありません。最も単純な三次元射影変換の対応例は、「角柱と斜めの側面を持った台形」がそうです(図14.3)。しかし、射影変換で対応しているとは、普通、考え付きません。数学的に射影変換を扱うと、三次元以上の射影変換の代数式も扱うことができます。しかし、現実的に立体図形の変換とどのように結び付けるかとなると、造形に応用する例を殆ど見ることはありません。透視図は、視点から遠くに在る形を相対的に小さく描きます。この透視図そのものは、正面から見ることを目的として描きますので、わざわざ斜めから見ることを想定していません。前項に紹介した福田繁雄のデザインは、逆変換の射影変換の応用ですが、見る側の立体的な位置関係を必要としています。三次元の射影変換を理解する手始めは、前章で透視図の解説に使った図13.1〜図13.3に示したような、もともと変形した立体図形を想像することです。このような立体図形が現実にあったとして、それを或る視点位置から見ると、各面が直角に交わる直方体に見えれば、これが立体図形の射影変換の対応であると納得できるでしょう。しかし、現実にこのような立体形状に作成したとしても、一度に見える六面体の面は三面までですので、現実的には面単位での観察しかできません。
2009.2 橋梁&都市PROJECT

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