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14. 立体図形の射影変換

14.1 トリックアートで扱う逆変換


14.1.1 射影変換の逆変換の例

図14.1:太陽の橋の歩道に作成されたメタモルフォーズ、図14.2:原画の造形デザイン(インターネットから採図)

 透視図法は、眼(片目)で見た感覚になるように身の回りの立体形状を平面図形に描く技法です。三次元の環境を考える変換ですが、三次元から三次元への射影変換ではありません。それも、「元の図形を変換する」方向の処理の流れで扱います。変換した図形から逆に、元の図形を求める処理は、普通考えませんが、数学的に射影変換を扱うと逆変換を扱うことができます。デザインアート、特にトリックアートとして逆変換を応用する例があります。平面図形を床に描くとして、元図から、手前を小さく、向こうを大きく描くと、手前から見れば正しい図形に見えます。福田繁雄(1932-2009)がこれを試みた作品が幾つかあります。そのうちの一つは、北九州市小倉に1992年架設された「中の橋」、通称「太陽の橋」の広い歩道に、福田繁雄がデザインしたひまわりの作品があります(図14.1)。この図の原画は、図14.2のように手前が狭く、遠くが大きくなっていて、正常な平面図形を射影変換した形状でデザインされています。歩道に描かれた図を手前から見ると、ほぼ原形通り、円形のひまわりの花が浮かび上がります。このような作品を歪像画(メタモルフォーズ)と言います。ただし、見るときの位置は、図14.2で辺の延長位置(消点)に立って、眼の高さが正しくないと、正確な円形に見えません、消点位置が図形から遠くなるようでは観賞目的にそぐいません。また、これを再び写真に撮って正確に原形を再現できるようにするには、カメラ中心が狙う視軸の向きも合わせなければなりません。つまり、射影変換の逆変換を応用するときは、三次元的に考えなければならない問題になります。
2009.2 橋梁&都市PROJECT

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