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9. 図形の変換の数学

9.3 回転の分類


9.3.5 座標系の約束が違うことで混乱が起きる

 回転を行わせる代数式の出発は式9.1の形です。座標系の約束は、記号の使い方や向きの約束が扱う専門分野ごとに異なることが多いので、変換マトリックスの式を無批判に信用すると間違えることが起こります。回転変換は、操作手順が違うと結果が違うことがさらに理解を妨げます。例えば、測量座標系は、北向きをX軸、東向きをY軸とする習慣ですので、高さ方向をZ軸に当てると左手系です。写真測量の解析では、座標系の回転を応用する計算が現れますが、デカルト座標で考えた回転公式と微妙に符号や係数の並べ方が変わります。印刷物で発表した論文で、式を正しく校正しなかったミスは、筆者もたびたび犯しています。このこともあって、実際に計算式を利用するときは、結果が納得の行く範囲にあることを検査することに注意します。式の誘導を追いかけるのは大変な手間が掛かります。一つの方法は、何かの方法で図に描いて確かめます。筆者は、変換マトリックスの縦ベクトルの成分が、変換後の座標軸の向きを示すことを利用して、式の表現を先に感覚的に決めておいて、図的に確かめる逆の方法をよく使います。正負の符号の付け間違いは、簡単なスケッチを書いてベクトルの向きを描くと、予測した結果と違う向きになりますので、直ぐに分かります。幾何の問題は、感覚的な理解の助けを利用しないで、代数的な解析だけで進めることには限界があります。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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