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9. 図形の変換の数学

9.2 代数学としての変換マトリックス


9.2.4 記号の並べ方に約束が増えること

 代数式を文字や記号で書き表すとき、書き順にはかなりの自由度があります。式9.1の書き方では、加算する順を変更してもよく、変数名の並び順を逆にしても意味は同じです。これを数学では交換則が成り立つと言います。式9.2、式9.3は、要素の並び順に約束が増えていくことを示しています。これは、幾何学的な性質、さらに言えば、位相幾何学的(トポロジー的)性質を反映させるためです。変換マトリックスは12個の要素がありますので、代数学的には12種類の変換があります。種類の違う変換を順に実行させる処理は、形式的にマトリックスの演算(×記号)で行わせます。変換を実行させる順番にも注意が必要です。式9.2は、元の座標値に3×3マトリックスを演算させて、原点回りで回転と変形処理をさせた後で、全体を平行移動させる約束を式にしたものです。最初に平行移動をさせておいて、それから3×3マトリックスを使って同じ結果を得たいとすると、平行移動の成分が同じになりません。つまり、交換則が成立しません。式9.3は、途中の変換演算がどのような順番であるかを無関係にして、最終の変換結果を表す形式の約束です。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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