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14. 実践的な作文教育

14.6 資格試験の氾濫


14.6.2 教育を他人任せにする資格試験

 インターシップ制度そのものの認知度が低かったこともあって、日本政府によるインターンシップ制度への公式な取り組みは、1997年からです。欧米に比べてかなり遅れて始まりました。従来、工科系の学生は、主に夏休みの実習が、実質的にはインターンシップでした。ところが、国内では、労働安全衛生法(1982)が制定されて以降、企業側は、面倒な事態が起こることを避けるため、実習生の受け入れを嫌うようになりました。資格試験は、主に紙の上で知識の程度を調べます。資格試験の主催者は、自前の努力で技術教育をしません。紙の上だけの問題作成には、大学や専門学校の教官に依頼することが多く、その結果、大学や専門学校は、資格試験の予備校化になっていることも起こってきました。学術団体は、何かのトピックについて、講習会やセミナーを開くことも見受けます。このとき、受講したことの証明書を出すこともします。それを自前の資格制度に組み上げ、安定した業務にすることも見受けます。割りを食ったのが大学や専門学校です。学生が専門学科の単位をとったとしても、資格試験を受けるための資格が得られる程度の価値しかありません。工学系の大学で学士や修士の称号を得たとしても、技術士並みの法的な処遇資格は認められず、改めて資格試験による認定を必要とするようになりました。建築士法は、理想に燃えた立法措置と考えられたのですが、現実は生臭い方向にも進みました。試験制度があると、一種の予備校的な教育産業の需要が起こります。さらに、細分化が進む専門知識を持つ技術者を自前で確保するため、資格制度や各種の許認可制度を、官公庁の外郭団体主導型で進めることが増えました。言わばお手盛りの利益誘導です。社会的に評判の悪いことも少なくありません。これらの制度は、視線が国内にありますので、国際的な競争の場では通用しません。
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