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14. 実践的な作文教育

14.6 資格試験の氾濫


14.6.1 お手盛りの試験制度が多い

 工業技術は専門の範囲が広いので、一般社会から見た専門家と言っても、すべてにわたって専門知識に詳しくはありません。何かの公共的な意思決定をしたいとき、いわゆる専門家集団を招集して、意見を求める合議の場が多くなります。1950年代までは、官公庁には大学で土木工学を専攻した技術系職員が民間業者の指導に当たっていました。いわゆる官庁主導型の直轄工事がそうです。欧米の各種の資格制度を真似て、官と学とが培った技術を民間に技術移転をすることが計画されるようになりました。その最初の代表的な制度が1950年に制定された建築士法です。1958年、国家資格として技術士法が制定され、工学全般に民間主導型で技術を管理することへの道が開かれました。技術士が行える業務は、専門的で、かつ実務的な応用能力を必要とする事項についての、計画・研究・設計・分析・試験・評価またはこれらに関する指導です。これと並行して、建設関係では、国土交通省の建設コンサルタント登録規定が設けられ、技術士の働く場が社会的に確立するようになりました。これらの資格は、役所主導型の試験で認定されるのですが、試験問題を作成する特別な専門家(主に大学の教官)の助けを元に、結果的に役所ごとのお手盛りの資格試験が氾濫するようになりました。
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