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14. 実践的な作文教育

14.3 短歌と俳句の功罪


14.3.1 短歌の歴史は古いこと

 万葉集は、7世紀から8世紀にかけて編集された、壮大な歌集です。作者は、貴族から平民までを網羅しています。文字は現代で使う仮名文字が未発達でしたので、万葉仮名を使いました。防人のような一般大衆は文字が書けませんので、万葉集の編者は、彼らの歌を聴き取って文字に変換しました。短歌は、庶民でも参加できる文学として、最小限の基本骨格を持たせることができます。構文論的に言えば主部と述部を持つこと、意味論的にも主張が明瞭であることです。短歌は、五七五七七の音節で構成される、と大方の人は理解していますが、万葉集には短歌と共に長歌もかなりの数が含まれています。短歌も長歌も、声にだして吟ずることが主な目的ですので、現代風に言えば、音楽的な構成を持っています。それは、八拍子が意識された、基本的に七五調の音律で作詞されていることです。例えば
  「あおによし・・・」 → 5音節+息継ぎ3拍」、
  「奈良の都は・」   → 7音節+息継ぎ1拍」
  「咲く花の・・・」  → 5音節+息継ぎ3拍」、
  「匂うがごとく・」  → 7音節+息継ぎ1拍」
  「今盛りなり・ 」  → 7音節+息継ぎ1拍」。
息継ぎを超える字余りは、音楽としてのリズムを乱します。
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