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14. 実践的な作文教育

14.2 言葉を吟味して使う


14.2.5 形容詞と副詞をなるべく使わない

 意見を含ませない文章を作文するとき、最も理解し易い注意は、形容詞と副詞をなるべく使わないように削除します。これらの品詞は、作者の情感を補う言葉だからです。例えば「双葉山は第35代の横綱である」は事実を述べた文であり「双葉山は非常に偉大な横綱である」は意見を言う文です。「非常に」が副詞、「偉大な」が形容詞です。大小関係を言う形容詞は、数量的に比較ができるように使います。英語で言うと、形容詞を比較級または最上級で使います。単純に、例えば「双葉山は強い関取です」とは言わず、「双葉山は安芸海より強い関取です」のように言います。英語風には、「双葉山は、史上最強の横綱の一人です」の形を見ます。この文は最強の横綱が複数いることを前提とした表現になりますので、唯一絶対を意味する形容詞の最上級として使うことは、論理的に間違いです。数の表現にも注意が必要です。英語の環境では、可算名詞や集合名詞を使う場合の約束が日常の言語習慣に根付いています。これを日本語にも反映させるには、言葉を追加しなければなりません。
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