多くの人の交流が増えれば、同じ物に別の言い方があることの発見があります。全く異なった言語間では相互の対訳が必要になり、同じ言語間でも別の言い方、例えば方言で話されると、その意味を説明してもらわないと理解できないことが起こります。言葉は時代と共に語彙が増え、また変化します。発声される言葉は一過性の情報伝達であって、何も証拠が残りません。言葉を文字で記録する約束(表記)を決めれば、発声の再現(発音)に役に立ちます。一般論で言えば、話し言葉(発音)と書き言葉(表記)とのデータ変換です。伝えたい内容の方を重要に考えて、文字を介して正確に伝えるための約束を決めたい。これが文章の書き方を必要とする理由です。読者に読んでもらい、理解してもらうには、教育的な配慮が必要です。既に慣用されていて意味が確定している場合以外、特別な用語が現れたとき、用語の定義をそこで説明するか、別に用語説明を付録などにまとめます。それ以降、その用語だけを正確に引用します。文芸作品では、別の用語に言い換えることもあり、それが評価されることもあるのですが、それとは全く対立した態度に徹します。学校で使う教科書・個人の環境で使う参考書・啓蒙書などは、著者の主張を抑え、読んでもらう側が理解できるような説明方法を工夫します。そうするには、同じ意味を表す複数の用語があるとき、それらの用語が現れてきた背景を説明し、その中のどれを選ぶかを推す必要があります。専門用語は、学術機関が定義を提案した上で、JIS化する方向に進むことが多くなりました。選定された専門用語をまとめた辞書をシソーラス(thesaurus)と言います。 |