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14. 実践的な作文教育

14.2 言葉を吟味して使う


14.2.1 丁寧語を使いたい

 良い作文にまとめる基礎的な条件は二つあって、単語単位の用語の選び方と、文として論理的な構成とに注意します。ここでは、思い付いた項目を順不同で説明します。言葉遣いは、或る標準的な言い方の他に、敬語を別扱いします。学校文法は、敬語の種類を尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類に分類しています。これに丁重語と美化語を加えて5分類とする説もあります。敬語には含めませんが、荘重語、尊大語などの区別もあります。しかし、大きく捉えて、丁寧語以外は、相手との上下尊卑を区別して言う言葉ですので、民主主義の社会ではそぐいません。また、男女差のない文体が必要になってきました。日常の話し言葉は、男女で言葉遣いが変るのは普通です。多くの女性が社会に進出するようになって、女性が発信する文書が増えています。この文書の文体に「である調」はそぐいません。「です・ます調」の作文は、書く側も読む側も抵抗がありません。文書全体に表題を付けるとき、「はじめての…」を見出しに使う図書を多く見かけるようになりました。この表題の付け方は、主に、女性の読者を引きつける商業用キーワードの定番です。文体は、他愛のないお喋り風になり易いので、そうならないような注意が必要です。悪い慣用句の例として;「すごく」、「と言えるかもしれません」、「日々努力している今日この頃です」などが眼につきます。自分を上位に置き、他を下位に見なすことを自己中心で表現し、他からもそのように扱ってもらいたいとき、尊大語やその反対の侮蔑語差別語が使われます。敬語を単語で区別するのではなく、態度・話し方・書き方の全体で程よい丁寧さを表すようにします。筆者の著作は、敬体の「です・ます調」を使っています。これを敬語とは言いません。「である調」は荘重語になるのでしょうが、声にだすと演説調になります。孤立語である中国語は、名詞単位の敬語が発達しています。この習慣は、役職名などを尊称に使うことに現れています。例えば「先生」「社長」とたてまつる言い方が代表的です。
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