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14. 実践的な作文教育

14.1 作文以前の一般教養


14.1.6 身内の礼儀はヤクザ的になり易い

 何かの人の集団(システム)があり、そこに階級制度があると、序列を媒介とした礼儀が定まり、その集団の秩序を保つことに役立ちます。民主主義社会では、年令・性差・学年・職務など、場面に応じた実用的・便宜的な方法で序列を決めて、弾力的に応用します。勝負事や習い事における段級位ハンディキャップの制度は、個人間の実力差を公平に判断できる良い方法です。集団内での序列と、それに合わせた礼儀は、その集団内、つまり身内の作法になり易く、外部に対して閉鎖的、攻撃的、非礼、非常識になることも少なくありません。集団の代表者は、何がしかの権力を行使できますので、全体としては結束しても、内部てきにはしばしば派閥に分かれ、権力闘争が起こります。閉鎖的な集団は、俗に村社会と呼ばれ、ヤクザ的な仁義が優先することも起こります。その集団の利益に反して行動する個人に対して、村八分的な制裁や、いじめも起きます。そもそも、学術団体、通称で言う学会は、専門に関して個人が平等に参加して討議をする場を持ちます。そこでは、年齢・性差・身分・学歴などによる差別をしないことが理想です。仮に学術的に対立して激論になっても、個人的・感情的・攻撃的な話し方にならないようにするには徳育が必要です。学術団体は、同時に懇親の場を持つのが普通です。そこでは、口論によるわだかまりを解く場としての意義があります。この考え方は理想ですが、実情はかなり生臭い場面があります。言葉として似ていますが、学界は専門別学者の閉鎖的で排他的な集団の意味で使われます。そこは、構成員の仲良しクラブ的な性格を持ちますが、そこに属するには、推薦状や紹介状などを参考にした審査があるのが普通です。ところで、軍隊は武装集団です。幾つもの階級が決められています。上位の階級は、下位の階級に対して服従を義務付けないと、制御ができない集団になる危険があります。したがって、感情や徳育を無視した物理的な方法で集団の秩序を保ちます。これが、上位者が下位者に対して理不尽な暴力を振るうことに繋がります。筆者の年代は、軍事教育の制度が学校教育まで支配していたことの苦い経験を持っています。
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