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11. 文章作法

11.2 技術文書は文学的表現を避ける


11.2.4 命令文の表現に苦労する

 社会生活の場では、相手(二人称)に対して質問する・要求する言い方が必要です。英語では疑問文命令文の形式があって、動詞または助動詞を文頭に置きます。日本語では、動詞の位置が文末ですので、文の最後になって、やっと質問か要求かの区別がつきます。英語での「Do you go to school?」「Go to school」に対応する言い方は、「(あなたは)学校に行きますか?」、「〜なさい」の語順です。日本人は対話が下手であるとの批判もありますが、文の終りまで待たないと返事も質問もしようがないことが一つの要因です。加えて、話者間の身分・尊卑の違いを敬語の使い分けで区別します。日本語動詞の命令形を直接使う場面も無くは無いのですが、例えば「学校に行け」のようなぶっきら棒になるか、高圧的になります。「良い子はここで遊ばない」は、典型的な本音(ここで遊ぶな、と直接禁止を言いたい)と建て前(相手の子は悪くないとおだてる)の言い方です。規則・契約・基準に使う命令形には、人称を特定しない言い切りが使われます。動詞の終止形を単独に使うことで命令形と理解させます。誤解が生じないように、前文などを補います。箇条書きにするときは、終止形または体言止めで使います。例えば「甲は、毎月○○万円の家賃を乙に支払う」の言い方です。語尾を追加して「〜支払うこと」が見られ、更に「〜支払うこととする」、「〜支払うものとする」のような文体が現れます。この形は、「もの」、「こと」を英語の関係代名詞の先行詞と解釈することができて、後ろの方の「する」の言い切りが命令形の使い方です。英語教育を受けたインテリは、不思議な表現であるとは思わないようです。話し言葉では、「しなさい」「して下さい」の丁寧体とします。書き言葉には揺れがあります。文の書き方の基準には、JIS Z 8301 規格票の様式が良い参考になります。法律文などの書き方には、公用文作成の要領があります。JISにも引用されている、内閣法制局で行う文章のチェック法が参考になります。

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