言葉は基本的に音声情報です。音声は物理的には一過性の現象ですので、証拠が残りません。したがって、眼に見える文字で記録を残します。その文字は、発声を記録する表音文字を使うのが基本です。そうであっても、正確に発声を再現できません。標準化を提案するときも、書き言葉と話し言葉とに違いがあります。英語でもそうです。現代の書き言葉の代表は新聞に見られます。日本語(和語)は、中国から漢字文化を輸入し、それから表音文字の仮名を発案して漢字との共存を図りました。これが日本語の書き言葉の混乱の始まりでした。筆者個人の研究論文で言うと、若いときは「である調」で書きました。と言うよりは書かされました。この文体は、上位者から下位者に向けて話す演説調であり、権威ぶった文体として、学術論文では標準の文体です。これを読み上げて話し言葉に使うと、丁寧語とも言えず、まして尊敬語でも謙譲語にも属さない不思議な言い方になります。この連載の筆者の文体は、「です・ます調」です。そのまま声に出して話しても理解できる言文一致になるように、なるべく和語的な言い回しを意識しています。音読みの漢字熟語は、同音意義語の区別が付き難いからです。 |