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10. 英語と日本語の文構造

10.4 英語と日本語とでの動詞の違い


10.4.6 通常の表現では未来形も使う

 英語の文法書では、動詞の時制を説明するとき、現在・過去・未来に分け、未来形を示す助動詞にwillが使われると説明があります。このwillの解説に、日本語で解説する文法書では、単純未来意志未来に分ける間違いがあります。後者に当てる日本語の誤用化は「…したいと思います」の言い方の氾濫です。実は、「思います」は感情表現ですので、実用文では使いません。日本人が書いた英語の文法書は、学問的に過ぎるところがあります。日本語に達者な英語のnative speakerが解説した、単純で明快な説明を表10.1に引用しました。

表10.1 英語動詞の時制は12種類ある

時制の形

英語表現例

日本語表現例

意味の解説

現在

現在形

drink(s)

お酒は(よく)飲みます

習慣を言う

現在進行形

is drinking

今お酒を飲んでいます

これが標準の現在形

現在完了形

has drunk

ずっと今まで飲んでいます

過去から続いて今も

現在完了進行形

has been dinking

上と同じ(意味は殆んど同じ)

上と同じ

過去

過去形

drank

以前は(よく)飲みました

過去の習慣

過去進行形

was drinking

飲んでいまし

ある時点で飲んでいた

過去完了形

had drunk

ある時点までずっと飲んでいました

今の状態は分からない

過去完了進行形

had been dinking

上と同じ(意味は殆んど同じ)

上と同じ

未来

未来形

will drink

これから飲むことになるでしょう

単純に予定を言う

未来進行形

will be drinking

この先、飲んでいるでしょう

未来の状態予測

未来完了形

will have drunk

ずっと飲み続けているでしょう

時間的に継続している

未来完了進行形

will have been dinking

上と同じ(意味は殆んど同じ)

上と同じ

参照した文献;マーク・ピーターセン、日本人が誤解する英語、光文社2010、p.50


コラム9: 僕たちと僕らの使いわけ

 結論から言うと、低学年の男の子が自分を含めた身内を言う場合に「僕ら」を使います。大人が子供に話しかけるとき「僕たち」と言うことをします。大人の方が子供と同位に居ることを言うことになりますので、この呼びかけ「…たち」は丁寧語です。時代劇では、親分が子分に命令的に呼び掛けるとき「てめえら」と使います。そうでないとき「てめえたち、飯は食ったか」のような丁寧体で言い分けます。これらの使い分けは、正しい話し言葉が使われる環境にいて覚えます。人との対面的な交流の場に居ることが多いと、洗練された言葉遣いを覚えます。落語や講談のような話芸が演じられる寄席は、良い勉強の場でもあるのです。教育の場では、対面授業が重要です。対話の機会が少ないか、それを意識的に避けていると、丁寧な話し方ができなくなります。これが日本語の乱れ、さらには攻撃的な言い方やいじめ的な言い方に繋がります。携帯電話を使うメールは、対面的な交流がありませんし、自分を隠すこともしますので、冷たい日本語が氾濫します。日本語の対話では、「済みません」のような謝罪の意を持つ言葉や丁寧な物言いが多いのが、非合理的であるとの批判もあります。社会的な場では、「私たち」よりは「私ども」を使うか、企業の場合には「貴社・弊社」の使い分けがみられます。互いに対等な立場で失礼にならない言い方に注意を払うのは、良い文化であると思います。

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