英語の文法書では、動詞の時制を説明するとき、現在・過去・未来に分け、未来形を示す助動詞にwillが使われると説明があります。このwillの解説に、日本語で解説する文法書では、単純未来と意志未来に分ける間違いがあります。後者に当てる日本語の誤用化は「…したいと思います」の言い方の氾濫です。実は、「思います」は感情表現ですので、実用文では使いません。日本人が書いた英語の文法書は、学問的に過ぎるところがあります。日本語に達者な英語のnative speakerが解説した、単純で明快な説明を表10.1に引用しました。
表10.1 英語動詞の時制は12種類ある
時 |
時制の形 |
英語表現例 |
日本語表現例 |
意味の解説 |
現在 |
現在形 |
drink(s) |
お酒は(よく)飲みます |
習慣を言う |
現在進行形 |
is drinking |
今お酒を飲んでいます |
これが標準の現在形 |
現在完了形 |
has drunk |
ずっと今まで飲んでいます |
過去から続いて今も |
現在完了進行形 |
has been dinking |
上と同じ(意味は殆んど同じ) |
上と同じ |
過去 |
過去形 |
drank |
以前は(よく)飲みました |
過去の習慣 |
過去進行形 |
was drinking |
飲んでいました |
ある時点で飲んでいた |
過去完了形 |
had drunk |
ある時点までずっと飲んでいました |
今の状態は分からない |
過去完了進行形 |
had been dinking |
上と同じ(意味は殆んど同じ) |
上と同じ |
未来 |
未来形 |
will drink |
これから飲むことになるでしょう |
単純に予定を言う |
未来進行形 |
will be drinking |
この先、飲んでいるでしょう |
未来の状態予測 |
未来完了形 |
will have drunk |
ずっと飲み続けているでしょう |
時間的に継続している |
未来完了進行形 |
will have been dinking |
上と同じ(意味は殆んど同じ) |
上と同じ |
参照した文献;マーク・ピーターセン、日本人が誤解する英語、光文社2010、p.50 |
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コラム9: 僕たちと僕らの使いわけ
結論から言うと、低学年の男の子が自分を含めた身内を言う場合に「僕ら」を使います。大人が子供に話しかけるとき「僕たち」と言うことをします。大人の方が子供と同位に居ることを言うことになりますので、この呼びかけ「…たち」は丁寧語です。時代劇では、親分が子分に命令的に呼び掛けるとき「てめえら」と使います。そうでないとき「てめえたち、飯は食ったか」のような丁寧体で言い分けます。これらの使い分けは、正しい話し言葉が使われる環境にいて覚えます。人との対面的な交流の場に居ることが多いと、洗練された言葉遣いを覚えます。落語や講談のような話芸が演じられる寄席は、良い勉強の場でもあるのです。教育の場では、対面授業が重要です。対話の機会が少ないか、それを意識的に避けていると、丁寧な話し方ができなくなります。これが日本語の乱れ、さらには攻撃的な言い方やいじめ的な言い方に繋がります。携帯電話を使うメールは、対面的な交流がありませんし、自分を隠すこともしますので、冷たい日本語が氾濫します。日本語の対話では、「済みません」のような謝罪の意を持つ言葉や丁寧な物言いが多いのが、非合理的であるとの批判もあります。社会的な場では、「私たち」よりは「私ども」を使うか、企業の場合には「貴社・弊社」の使い分けがみられます。互いに対等な立場で失礼にならない言い方に注意を払うのは、良い文化であると思います。 |