前々項で上げた「取材」は、中国語の語順では動詞+目的語(OV)です。主語(S)は、人であることが暗黙の了解事項です。ここで、第10.1.5に例示した「落馬」の意味を解説しておきましょう。中国語風に解釈すると、馬の方が落ちる、または馬を崖などから落とすことです。日本語では、人の方が馬から落ちる意味で使います。したがって、古い辞書の言海も、広辞苑にも、また小学生向けの国語辞書にも用語として載っています。なぜ載っているかの背景を説明した参考書を見たことはありません。もうひとつの例に「離島」を上げます。中国語流に解釈すると、人が島を離れる意義であって、「離島・帰島」の対を構成します。しかし、最近では和語的な「離れ島」を使わなくなりました。この元凶は、送り仮名の誤用です。下一段活用は「離れる」と「れ」も送ります。しかし四段活用では「離す」と使いますので、「れ」を省く書き方をし、こちらが普及しています。日本語の語順は、動詞が文末にきますので、「目的語+動詞」OVの順に並べる二字熟語があります。例えば「水防・砂防・風防」がそうです。中国語流の「防水・防砂・防風」の用語もあります。両方とも名詞としての使い方が自然です。しかし、前者は動詞の意義が弱くなっていて、例えば、「防水する」の言い方はできますが、「水防する」とは使いません。形容詞または副詞の意義を持つ漢字と動詞用漢字との組み合わせも、日本語の構文では動詞用漢字を後ろに使います。 |