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10. 英語と日本語の文構造

10.3 英語と日本語とでの名詞の違い


10.3.5 英語の集合名詞の理解が難しい

 英語の可算名詞は、単数複数の使い分けを神経質に区別します。日本人が理解し難い名詞の種類の一つに集合名詞があります。その理解に混乱が起こる例を幾つか説明しましょう。
@常に複数形扱いをする。例;people
読む側または話しかける人を含めて複数の人をまとめて言う意義がありますので、動詞は複数形で受けます。名詞は冠詞が必要ですが、単数形をとりませんのでtheを付けます。アメリカの独立宣言の文言は「Of the people, by the people, for the people」と使っています。
A単数形と複数形とがある(その1)。例;set, collection, groupなど
中身は複数です。種類などを限定した集合を区別するとき単数扱いで使います。
B単数形と複数形とがある(その2)。例;datumとdata
どちらも、定義としては「a collection of facts」です。スペルが違いますので、別の用語の扱いもあって、a datumとdatumsの対を専門用語として使う例があります。Dataは、或る種類の集合の意味で使うとき、動詞の単数形で受ける使い方も見られます。
C単数形と複数形とがある(その3)。例; systemとsystems
日本語化して、システムの用語が広く使われるようになりました。意義としては、複数の構成要素を集めて、一つの機能を持たせたものを指し、通常は電気・機械の一つの独立した装置を言います。人、さらには動植物の機能的な集合にも使う用語ですが、こちらは組織と当てています。システムに人の集合を含む考え方は馴染みがありませんが、1960年代のアポロ計画を支えた技術はsystems engineeringと複数形で言い、人もシステムの構成要素に含めました。これを日本語に訳すとき、単数形のシステム工学としてしまいました。日本語に訳すときに単数形にした例に、systems engineerがあります。コンピュータシステムの管理者を指す用語としてシステムエンジニア(SE)のように使っていました。SEの職務は、ハードウエア・ソフトウエアのシステム管理だけでなく、人事管理も含めますので、複数のシステムを扱う権限を持ちます。

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