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10. 英語と日本語の文構造

10.3 英語と日本語とでの名詞の違い


10.3.3 日本語の名詞も活用すると考える

 日本語の文法構造を言うとき、英語がSVOの語順であるのに対してSOVであるとの説明が使われています。この構造は、述語、多くは動詞、が文の最後に表れることを言います。文末に来るまで、述語が分かりませんし、肯定も否定も決まりません。最も原始的な対話は、眼の前にある物の名称を互いに確認し合う対話です。このとき、助詞を添えると丁寧ですが、「ね・さ・よ」などの接尾語も使います。この言い方は、上品には聞こえません。敗戦後、米軍が日本に駐留しているとき、英単語を並べて言うコミュニケーションに見られました。パンパン英語というのがそうでした。このことが一つのきっかけになったらしく、鎌倉市を起点として「ネサヨ運動」と言うのが1950年代に起こりました。これは,接尾語の使い方として、「元気だね」「大きいさ」「早いよ」などの語尾を使わせないように小中学生に指導する教育活動運動でした。しかし、1960年代後半には,消えてしまいました。それと同時に日常の言葉遣いにも、主部と述部の揃った丁寧な話し方を系統的に指導する教育が減ってしまいました。日本語の動詞は、語幹に付ける活用語尾込みを単位として膠着語の扱いをします。形容詞や副詞も、語幹に特別な語を付け、その全体で品詞を区別します。ところが、名詞の後に付ける「がのにを」などは、名詞の活用語尾とは言わず、助詞の分類を立てるのが特殊な考え方です。ドイツ語では、冠詞の種類を変え(例えば der, des, dem, den)、また名詞の語尾も単数複数の区別と性によって変化させますので、名詞も活用させて使うと理解することができます。上に挙げた「ね・さ・よ」は、話し言葉だけに使いますので、言文一致の立場からは外す方に賛成するのです。しかし、日常会話にまで使い方の制限をすると、優しさに欠ける物言いになります。

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