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10. 英語と日本語の文構造

10.3 英語と日本語とでの名詞の違い


10.3.2 外来語を名詞として取り込む

 新しく他の言語を覚えるときの参考書は、文字単位の意味を対訳的にまとめた辞書(dictionary)と、意味を伝える文字並びの約束、つまり文法書(grammar)とを使います。日本語、それも和語は、語彙の不足を補うため、外来語を多く輸入してきました。古くは中国語の漢字、現代では英語を始めとする欧米語です。欧米語は、音を表すカタカナ語で使うか、漢字熟語を工夫します。漢字は造語能力の高い文字です。明治以降、多くの和製漢字熟語が作られました。漢字は表意文字ですので、眼で見れば意味が判る利点があります。しかし、声に出して使うときは同音意義語の区別が付かない欠点もあります。一般庶民が欧米文化を理解しようとしても、カタカナ語、または漢字熟語を音読みで言われると判らないことが起こります。落語は、庶民向けの話芸です。学のある大家さんの言う言葉が、店子に判るように説明するときを話題としたものが多くあります。例えば、大家さんが畢竟(ヒッキョウ)と言うの聞いて、店子がその意味を尋ねます。その説明が「つまり」であると聞いて、店子が、「鼻づまり」は「鼻ひっきょう」と使うのだ、とからかいます。外来語、それも抽象名詞を輸入して使う場合、元の言語が動詞であるとき「〜する」を付けて動詞に、形容詞または副詞の意味があるときは、「〜な」「〜に」とします。これらを「スル名詞」「ナニ名詞」と言います。この単純な規則は、敗戦後、多くの外国人が日本語を学ぶようになって気が付いたものです。輸入言語は、日本語の表現を豊かにする、と好意的にみることもしますが、欠点として、同じ概念を言う用語が、複数現れます。教育目的にはすべてを紹介します。科学技術レポートでは、その中のどれかを標準用語に決めます。これがシソーラス(thesaurus)であって、専門用語辞書と訳しています。

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