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10. 英語と日本語の文構造

10.3 英語と日本語とでの名詞の違い


10.3.1 名詞の分類にも揺れがある

 言語学的に単語の機能を区別する品詞分類法は、種々の方法が提案されてきました。最も理解し易い品詞は、「物」の種類を指す名詞です。英語で使う分類は、一見、精密です。可算名詞・非可算名詞・普通名詞・固有名詞・抽象名詞・集合名詞・代名詞などがあります。日本語(和語)では、固有名詞・普通名詞・代名詞の区別しかありません。単数・複数を厳格に区別する言い方もありません。ただし、複数形の言い方に、「僕、君たち、私ども」のような例があります。その使い分けを教える参考書を見たことはありません(この章の最後に付けたコラム9を参照して下さい)。話芸である講談と落語を演目とした寄席は、庶民が話し方を教わる場になっていました。英語は、名詞と冠詞との組み合わせで、字面では表せない論理的な意味を区別します。この章の始め、第10.1.2項の「犬が好き」で例示したのがそうです。日本語の感覚から言うならば、「英語の名詞も活用させて使う」と割り切って理解するのがよいでしょう。英語は、ドイツ語の影響も受けています。例えば、ドイツ語の男性名詞に使う定冠詞(der, des, dem, den)は,日本語の助詞「がのをに」を使う格変化(decline)に対応しています。英語は、この使い分けを語順で区別して簡略化し、性別も区別しないtheだけになったようです。

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