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10. 英語と日本語の文構造

10.1 標準語の提案


10.1.4 話し言葉を書きとめる表音文字

 話し言葉をそのまま記録するには、表音文字を使います。古代の日本では、、万葉仮名が使われました。次いで、元にした漢字に引きずられる欠点のない仮名文字、それも片仮名と平仮名とを工夫しました。欧米ではアルファベットがそうです。英語は、アルファベットの文字数が最少です。母音は5種類です。そのため、逆に、英単語の読みの約束が複雑になる欠点があります。他の言語は、固有の発音にこだわって、アクセント記号などを付けた追加の母音文字も使います。話し言葉は時代と共に変化して行きます。それは、新しい言葉が増えると同時に、発音の単純化が起こり、それに応じて表記も変化します。アメリカ英語は、イギリス英語を簡単にした例を多く見ます。辞書は、発音と文字並びの標準を決める意義があります。それを作成するには、品詞分類が必要です。名詞は物の種類を言う語です。日常会話では、普通名詞と固有名詞とを使い分けています。「うちの猫の名前は太郎です」のように言います。コンピュータ言語では、名前はユーザ側で恣意的に決めます。このとき、コンピュータ側で命名規則が決められていて、予約語(reserved word)は名前に使えません。自然言語に話しを戻すと、日常生活に不自由しない最小限の語彙を集めたものは、小学生低学年向けの国語辞書です。尤も、編集者の立場からは欲がでますので、語彙数は2万語を越えます。ヨーロッパ系の独仏の言語環境では、基本語彙数として5千語に抑えた簡易辞書が見られます。独仏語は言語ナショナリズムがあって、英語の取り込みを嫌う傾向があります。日本語の国語辞書の語彙数が多くなる理由の一つは、和語の言い方と、外来語である漢字と、日本語化した欧米語を当てるなど、複数の言い方があるためです。例えば、辞書の見出しでは、「いぬ」と「犬(けん)」の二つがあります。英語の場合にも二つの言い方が見られ、フランス語とドイツ語の影響を受けています。例えば「売る」は漢語に「販売」があるのと似て、sellを使う場合とラテン語から取り込まれたvenderもあります。どちらも、後者の用語は官僚的で硬い言葉と受け取られます。

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