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8. 作文希望と教育指導

8.2 日本語文法を見直して作文する


8.2.1 文字並びの分解と総合

 日本語を言語学的に研究する方法は、明治維新以降、欧米に学びました。その一つは、語の並びを小単位の要素に分解し、それぞれの使い方を分析する方法です。これには、英語の品詞分類法を参考にしました。英語と日本語とでは文構造が違いますので、日本語固有の品詞も提案されました。その代表が助詞(英訳はparticiple)です。これは、英語の前置詞(語順は後置詞です)や接続詞に当たるとされます。英文法の用語でのparticipleは分詞の訳語を使い、動詞に付けて現在分詞(-ing)または過去分詞(-ed)に替えます。日本語の助詞は、数も使われ方も多様ですので、精密化を目的として多くの細分類法が提案されています。代表的な分類用語は、格助詞・接続助詞・副助詞・終助詞です。しかし、助詞の使い方を理解したいとしても、「が・の・に・を…」が格助詞で、「は・も…」が副助詞と説明されても、文書の書き方にどのように区別して利用するかの規則は判りません。作文は、分析の反対向きに、語を集めで並べる総合です。このときは、終止符「句点(。)」で区切られた論理的な一単位の語全体を(sentence)単位として、まとめる視点を必要とします。英語では、最小の文単位をclauseと言い、日本語では節と当てます。一単位の節は、一つの主部(subject)と一つの述部(predicate)で構成します。主語・述語と言わないことに注意します。また、英語では主部を省く文構造を使いませんが、日本語では主語も述語も省略が普通にみられます。主部・述部に分けたくても、明瞭な判断ができないことも起こります(次々項で例を説明します)。この違いは、英語との対訳を必要とする場面で混乱を起こします。好意的な見方は、日本語の語順に自由度があるので、豊かな表現ができると言います。前章7.3.4項で紹介した季語は、直接の意味に隠された、感性で理解させる意味があります。英語にしたいとき、省略されている意味を補うことをしないと、一意の対訳が提案できません。この省略の習慣が、日本語が曖昧であると言う、否定的な評価になっています。

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