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8. 作文希望と教育指導

8.1 作文の計画


8.1.9 論説・批評・挨拶などの作文

 筆者は、学識経験者として招かれる機会が多くありました。質問する側も無神経なところがあって、「どうお考えですか?」「どう思われますか」のように意見を述べることを要求します。解説的な説明ならば、教育目的を持たせることができて、客観的な態度をとることができます。巻頭言、論評、挨拶文などを依頼されるときも困ります。そもそも学術的な作文は、意見を含ませません。意見となると、個人的な、また主観的な感想を含みます。好意的な発言よりも批判的な内容を言う方が、何となく優越感を持ちますが、それも行き過ぎると中傷やいじめになり、さらに下品に落ちて、作者自体の人格に疑問符がつきます。日本語の動詞では明示的な命令形がありませんので、提案を言うとき、文末の表現に苦労します。客観的な体裁を装うため、「期待する」、「すべきである」「してはならない」などの言い方を見ます。受身の表現として「〜考えられる」「〜思われる」も見ますが、これはレトリックであって、「考える」「思う」と同義です。一方、業務上の管理職になると、挨拶を述べることや訓示的な言い方が必要になる場面が増えます。この材料には多くの人が苦労しています。古典の語句、宗教書にある格言、先人が残した警句などを場面に応じて使い分けるための勉強が必要です。

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