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8. 作文希望と教育指導

8.1 作文の計画


8.1.6 技術移転を目的とする文書

 工学・医学・農学・商学などは、まとめて実学と言います。雑物を省いて(捨象して)純粋に真理を追究する科学分野を理学(science)に分類しています。系統立てた知識が学問です。実学は、世俗的な問題ごとに学問的な方法を応用しますので、応用科学(applied science)と言います。工学は物造りに応用します。複数の人の協力で複数の同じものを造るため、原則として丁寧な文書や図面を残します。これらの書き物は、教育目的を持って編集します。日本語では「手引き」ですが、英語ではマニュアル(manual)、広い見かたでくくるときにsoftware(ソフトウエア)の用語を使うようになりました。これらは、現場の職人さんレベルの人が読んで利用する性格の書き物です。したがって、学問的な用語や外来語、直ぐに数値計算に使えない数式の引用を避けます。職人さんの教育指導に当たるのが技師(engineer)です。「師」の字が付くことに注意します。実学で使う教育用の文書は、二種類、教科書と教材です。教科書は、問題点を整理して一つの筋書きを持たせます。教材は、何か特定の課題を解説します。日本は教育レベルが全体として高くなりましたので、実務の現場で利用することを考えないことも見られるようになりました。同じことは、海外の発展途上国に出掛けていって、技術移転(technology transfer)を計画するときにも見られ、技術が相手に根付かない問題になることがあります。

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