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8. 作文希望と教育指導

8.1 作文の計画


8.1.5 紀行文は旅日記の文学である

 日常の生活で毎日の日記を書かない人でも、旅行に行くと日記風の記録を残すこともします。現代は手軽に写真を取ることに代えることが多くなりました。観光地でプロが撮影してくれる写真は、日付と場所が入ります。日付を入れられるカメラは、データ整理に役立ちます。日記風の見聞記を書き、それを文芸作品にすることも見られます。芭蕉の「奥の細道」は、綿密に推敲された文章を主にした旅行日誌です。文章のまとめに俳句が添えられています。現代風には表題や抄録と見ることができ、文単位を要約する言葉の選び方が見事です。芭蕉の旅行には、弟子の河合曾良(1649-1710)が同行し、「曾良旅日記」を残していて、奥の細道よりも情感を抑え、天候や地誌的な描写をやや詳しく記録しています。近代以降、欧米では旅行記が多く出版されています。通常の旅行記は文芸作品ですが、ダーウィンの「ヴィーグル号航海記」は、博物学的な視点を持った日誌です。これを元にして「種の起源」の発表につなげました。著名人は、引退後に自分が書き残した日記やメモを使って自叙伝(autobiography)をまとめることがあります。

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