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7. 文章構成の学問的な扱い

7.4 標準語の成立過程と保守の現実


7.4.3 文体違いで書き言葉を区別する

 文体は、「だ・である調」の常体と、「です・ます調」の敬体のどちらかを使うのが標準です。文芸作家が固有の表現として工夫した文体を言うとき、坪内逍遥が『小説神髄』で提唱した「雅文体」「俗文体」「雅俗折衷文体」や、谷崎潤一郎が『文章読本』で提唱した「講義体」「兵語体」「口上体」「会話体」の分類などがあります。これらの文体で書かれた文は、そのまま読み上げて使うと不自然に聞こえます。その理由は、話者の一方的な感想を記録し、それを語りにしたような、独りよがりの文になり易いからです。話し言葉は、話者の前に聴く人がいることを意識した言葉遣いです。聴く側の人を、男女、年令違い、職務上の上下関係などで区別をしないようにすると、敬体が残り、言文一致の理想に近づきます。

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