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7. 文章構成の学問的な扱い

7.4 標準語の成立過程と保守の現実


7.4.2 新聞は書き言葉に注意を払っている

 新聞は、多くの人(大衆;mass)が日常的に文書情報(書き言葉) (communication)のメディア(媒体)の代表です。放送の方は、話し言葉で伝えます。その両方を合わせて、マスコミの用語が使われます。新聞は、毎日発行されます。大新聞社は、発行部数が非常に多いので、世論形成に大きな影響力を持つようになりました。定期刊行物、さらに単行本の出版も大量印刷の技術に支えられています。しかし、発行の間隔が空きますし、読者層が専門によって分化もしますので、マスコミ機関と比較できるほどの影響力はありません。新聞が使う書き言葉は、一般大衆から見ればやや高圧的で権威主義が見え隠れする文体です。これは漢文訓読法の文体に影響されてきた歴史的な背景があるからです。新聞記事の内容は、客観的な情報を主にするのですが、記事の作者は、往々にして情報の出所を確認することをしないで、言わば受け売り的な伝聞情報や、作者の断片的な知ったかぶりの情報も加えることがあります。記事の作者が抱く個人的な感情を加えると、さらに客観性も公平性も大きく損なわれます。マスコミ機関は、報道内容の客観性を保つために内部的に規則を作成しています。その内容は、この連載の表題である技術文書の書き方と多くの点で共通しています。ただし、企業として利益も上げなければなりませんので、官僚におもねる面と、都合の悪い規則を採用しないこともあります。例えば、漢字の利用では常用漢字の利用にこだわるのがそうです。振り仮名を付ける手間を省くことができるからです。

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