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7. 文章構成の学問的な扱い

7.2 欧米に学んだ日本語の言語学


7.2.7 明治以降は文体の模索時代である

 中国語・英語ともに外国語です。それらを理解するには、辞書を用意し、文法を勉強して翻訳します。そこで使われた翻訳調の文章、つまり漢文訓読調は、一般庶民の話し言葉とは差があります。この文体を更に砕いて、耳で聞いても分かる文章にすることが必要でした。二葉亭四迷(1864 - 1909)に始まるとされる言文一致の文体の提案がそうです。漢文訓読法の文は、漢字熟語の多くを音読みで引用します。日本語の環境では、耳で聞くだけでは同音異義語の区別ができないことが起こります。字数が多く、読み方の複雑な漢字教育は非効率であるとして、「漢字廃止論」が唱えられ、ローマ字化、さらにカナ文字化も提案されました。音の並びだけを表す表音文字だけでは、情報の伝達が充分にできませんので、絵を併用するのが便利です。漢字が象形文字であることは、言語機能上、大きな利点を持っています。したがって、日本で漢字を廃止しなかった、また、廃止できなかったことは、現在の時点から見れば、実用的な選択でした。そうであっても、話し言葉と書き言葉とが異なることの問題は残っていました。これに対応させるため、書き言葉の方を話し言葉に合わせる方向に進んできました。

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