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7. 文章構成の学問的な扱い

7.2 欧米に学んだ日本語の言語学


7.2.2 英文理解に漢文訓読法が応用された

 明治維新は、欧米文化を積極的に摸倣する時代の始まりでした。これには、欧米語の理解、とりわけ、英語の日本語への翻訳が必要でした。欧米文化を学ぶとき、元の言語ではなく、上の項で説明した造語法で大量の漢字熟語の専門用語が開発されました。これは、庶民レベルでも英文和訳で理解できるようにしたのでした。その結果として、急速に日本の近代化が成功しました。この経過は、欧米諸国だけでなく、近隣のアジア各国も驚くほど巧くいきました。この理由は、日本人の漢字識字率が高かったことに加えて、既に漢文訓読法が定着していたからでした。夏目漱石は英文学者でしたが、漢学の素養も深かったのです。英語は、中国語と同じように、構文が主語・述語・目的語(SVO; subject, verb, object)の順です。英文本体に返り点などを記入しないのですが、翻訳文のスタイルは、英単語単位を漢字熟語や和語に置き換えた上で、漢文訓読法を応用して並べ換えた形になっています。

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