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7. 文章構成の学問的な扱い

7.2 欧米に学んだ日本語の言語学


7.2.1 漢字は外来語であること

 古い時代、和語(日本語)は文字を持っていませんでしたので、中国から漢字文化を輸入し、日本風の利用を工夫してきました。表音文字のカナが開発され、意味が同じ漢字に日本語の読みを当てました。これが「訓読み」です。中国語の発音も「音読み」で使いますので、場面に応じて漢字部分の読みを覚えます。一方、中国を中心とする漢字文化圏は、公文書などに中国語風の漢字並びで書く習慣がありました。中国語風の文献を理解する教養に、漢学が重要視されました。漢字文献を日本語で理解する方法として、元の漢字並びに返り点と助詞の「テニヲハ」、用言の活用語尾を書き込み、文字並びとは違う順で読み上げます。この読み順のままを文書に書く方法が「漢文訓読法」です。言わば中国語の翻訳スタイルです。この書き言葉の文体は、江戸時代にほぼ定着しました。漢字の利用では、和語が先にあって、その読みに漢字を当てることがあります。例えば、「東雲」を「しののめ」と読ませるのがそうです。これらが、日本語の学習を複雑にしている理由の一つです。和語は、具体的な、眼に見える物の名前の種類は豊富ですが、抽象的な意味を表す語彙が少ないことが特徴です。物の名前も、単数と複数を区別する言い方が不完全ですので、英語との相互翻訳のときに苦労します。抽象的な意味を持たせる用語が必要になるとき、漢字を組み合わせた熟語を工夫することで、効果的な造語ができます。

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