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5. 図形と字形の作成

5.3 組み版記述言語を理解する


5.3.5 発声と文字の区別

 言語(language)の基本は、音としての話し言葉です。音は一過性の情報伝達ですので、後に何も残りません。逆に、文字が残っていても、発声は分かりません。文字を使えば、記録を残すことができて、歴史を辿る手段が得られます。スイスの言語学者ソシュール(F. Saussure, 1857-1913)は、この二つをフランス語のパロール(parole)とラング(langue)とで区別しました。文字を使わなくても、日常生活の不便になりませんので、近世までは文字を持たない言語も多く存在していました。日本では、中国から漢字を輸入して、それを日本風に使う方法を工夫しました。公的な文書記録は、古事記(712年)が最古とされています。出版文化の爆発は明治維新以降です。したがって、それ以前、庶民レベルが情報を共有できる範囲は狭く、ご先祖さまの記録も、少し古くなると分からないことが普通でした。言語は、人と人の間での情報交換の媒体としての意義があるのですが、コンピュータを擬人化して、相互に話し合う言語も考えるようになりました。コンピュータ言語、プログラミング言語、グラフィックス言語、そして組み版記述言語などです。音譜は、音楽を記号と歌詞を使って文書化する方法です。

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