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5. 図形と字形の作成

5.2 図形データの構造


5.2.2 オブジェクトの概念が生まれた背景

 そもそも、パソコンのOSがGUIに移行したことで、現実世界にある、実体を持った「物」の図形をモニタの画面に表示し、それを擬似的に操作するインタフェースが主流になりました。モニタ上の図形は、現実に在る物をモデル化した仮想世界に在るのですが、これも「物」扱いをしてオブジェクトの用語で抽象化するようになりました。英語の環境では普通に使われる単語であっても、日本語に訳し難い概念があります。多くの参考書では、読みをカタカナ語にしただけで引用しています。文字も図形、つまり「物」ですので、一文字単位で数えます。漢字は、扁と旁で構成し、さらに単純な線の集合と見ることもします。これを、「複数の、単純な図形要素の組み合わせで、複雑な図形(オブジェクト)に構成する」と考えて、structured graphicsと言います。現在ではオブジェクト指向グラフィックス(object-oriented graphics)の用語を使うようになりました。ハイフンが入ることに注意します。「動詞orientの主語はコンピュータです。目的語が図形要素(graphics object)だよ。」の意義です。これに当てる日本語は、英語のorientedの個所だけを指向に直したカタカナ語です。丁寧な説明がなければ、何のことか判りません。図形要素(これがオブジェクト)、例えば線や点、にプリミティブ(primitives)と別名を当てることもします。線は、線の太さ、実線・破線、色などの区別で特徴づけられます。これらを、属性(attributes, properties)と言います。このような考え方を使って市販されているのがCADソフトです。中身は作図用ツールです。図形データ(オブジェクト)をファイルに保存して再現ができます。そのとき、図形要素を修正したり変更したりすることができる機能がオブジェクト指向の考え方です。

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