筆者の著作では何度も説明していることですが、技術は三つの要素(道具・技法・技能)を考えます(第1.1.1項参照)。印刷物を得る技術は、ハードウエア(道具)としてのプリンタ;ソフトウエア(技法)としてのプログラムと文字データ;そして、インタフェース(技能)が文書の書き方です。文字も図形です。印刷の場面では写真や図も図形の扱いをします。ただし、文字と一般的な図形とでは、同じ概念で扱える場合と、そうでない場合とがあります。同じ概念で扱う場合の用語の代表がオブジェクト(object)です。これは、具体的な形を備えた物本体ではなく、仮想の世界にあるソフトウエア的なデータを総括して言います。これを抽象化すると言い、日本人には直観的な理解ができ難い考え方です。和語(日本語)には抽象的な意義を表す用語が少ないので、漢字の用語を借りて、オブジェクトには「物」と当てます。漢字の使い方を見ると、動物・生物・人物のように、生き物も含めた分類もあります。英文法の用語では目的語の訳を当てています。この目的語には、無生物の物だけでなく、人も言うことに注意します。例えば、「I give him a book」直接目的語「(を)と付ける」はbookです。間接目的語「(に)と付ける」はhimであって、人です。日本語では、人を意識するときは、同じ発音の「者」を当てることをします。「物」と「者」をひっくるめて、それに集合名詞的な名詞単語を当てることは、英語の環境ではよく見られます。これが抽象の思考過程です。英語のobjectと対をなす用語がsubjectです。こちらは文法用語では主語です。哲学用語では、主体と客体との対を使うことがみられます。コンピュータ処理は、コンピュータを擬人化し、その人が主語の役をしますが、取り立ててsubjectの用語を表に出すことはありません。 |