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2. 数学と算術との対立

2.5 実用計算の進め方の歴史


2.5.6 計算書は最初から手書きで清書した

 計算尺は、事務計算では使いません。計算道具としての、そろばんと計算尺とを使いこなすことは、技術者の必須の素養でした。実際に計算を進める作業のとき、計算手順と、途中の計算値を書き残しておいて、後からの検査に役立てるようにしました。これが、見易い計算書を作成することと関係します。途中の計算過程をメモに書いておいて、改めて清書することは、作業の二度手間です。メモから転載するときに削除してしまうか、写し間違いなどの事故も起こります。したがって、計算を進める技術者は、最初から手書きで清書を作成するように訓練を積みました。これが、手書きの計算書に残る技術者の個性です。手計算で計算書をまとめてあると、その計算過程を辿ることができます。初心者が設計法を勉強する方法の一つが、過去に作成された計算書を真似ることです。この計算書は、設計計算の進め方(手順)を、そっくりコンピュータ計算のプログラムに書き換えるときの、原理的原稿になります。これが、科学技術関連の社会で、コンピュータ利用が急速に普及した下地でした。

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