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2. 数学と算術との対立

2.1 数を文字で表す方法


2.1.4 実社会では数字表記と向きあう

 実業と言う言葉があります。工業・農業・商業・医業などを指します。代表的には商業を指し、英語ではbusinessで括ります。工業の方は、物造りの技術に眼が行きますが、材料の寸法や積算、さらに、これらを決めるときの算術的な方法を説明するときに数字表記を使います。手計算のときは、横書きのアラビア数字を使うと便利であることが実感されました。そろばんや計算機械を使う計算であっても、数値を用紙から読み取り、また用紙に書き写すときの手間に多くの時間を取られます。工業も商業も、お金に関係する計算が重要です。商業の方で応用されている計算術は、正誤の判定に揺れが起きないように、歴史的にも厳密な約束を決めてあります。商業計算術に数学的な方法を応用すれば、合理的な計算ができると思い勝ちです。しかし、実は非常に保守的な算術技法を守っています。一つの例に銀行預金の利子計算があります。年利率が5%であれば、n年後の元利合計の計算は、数学モデルを考えるならば1.05のn乗で表される定数を掛けます。しかし、この方法は使いません。一年ごとに元利合計を計算し、小数以下を切り捨てた値を次年の元金にする計算を繰り返します。

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