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1. 日本も開発途上国であった

1.2 工業製図法の衝撃


1.2.5 製図法の標準化は難産であった

図1.3 西海橋の一般図
 明治政府が進めた近代化の象徴的な技術が、鉄道の建設でした。日本全土に鉄道網を完成させるには、国策として標準化が必要でした。レールの軌間を狭軌にしたのも一つの例です。重量の大きな蒸気機関車を安全に渡す構造は、鉄道橋に限らず、道路橋でも採用され、地域の近代化のシンボルマークになりました。鉄道を始め、多くの工業技術は、主にアメリカに学びましたので、製図法の国家規格であるJISの投影法も、第三角法を採用しました。この方法は、対象物の外形の投影図で、平面図・正面図・側面図の図の配置が、これを紙箱と置き換えた場合の展開図の位置関係と同じですので、分かり易いのです。

 [図1.3の解説] 橋梁・船舶・建築物など、寸法の大きな構造形状は、正面図を製図用紙の上に置き、平面図をその下に描くのが、実用主義的に見て、納まりがよくなります。実は、この図の配置は、第一角法ですので、機械関係の技術者は「規格違反である」とお節介な批判もしていました。

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