図 12.2 薄肉の板材で構成したH形断面の捩じれ
梁や柱は細長い部材です。その解析モデルは、長さ方向の応力の性質として6種類を扱い、その応力度の分布も6種類です(曲げモーメント2方向、剪断応力2方向、軸力、捩じれモーメント)。この6種類に限定するための仮定を三つ使います。@フックの法則、A平面保持の仮定、Bサンブナンの原理です(5.3.4項参照)。しかし、Aの仮定は、部材断面のそりを考えると成立しません。そりは二種類の原因で発生します。一つは剪断応力度によるそり(第8.1節)、二つ目は、幾何学的な変形によるそりです(8.3.5項、図8.12参照)。前者によるそりは、サンブナンの原理で無視することができます。後者のそりは無視できない場合があって、これによる部材断面の応力度は、上記の6種類のどれにも属さない分布になります。と言うことは、この反りが出る部材は、二つ以上の単純部材の組み合わさった構造系の性質があることです。図12.2は、薄板をH形に組み上げた、ごく普通の断面形です。柱、または梁として使うときは単一部材として扱うことができます。しかし、捩じれを持たせる場合には、サンブナンの単純捩じれだけでなく、ワグナー曲げ捩じれの応力度分布を考えます。これが構造系の性質を持ちます。この梁を90で軸回りに回転させた形状が、橋梁では2主桁橋の構造系のモデルであることが理解できれば納得できるでしょう。曲げ捩じれは、左右の主桁が逆向きの曲げを受け、左右主桁の逆向きの撓みが、見掛け上の捩じれ変形を起こすことです。H形断面の部材を、見掛け上、線状の構造物として解析するときは、捩じれ変形φを、単純捩じれ剛性(GK)の捩じれと、曲げ捩じれ剛性(EC)の捩じれと、個別に計算しなければなりません。剛性の計算式は、第8.3節に紹介しました。また捩じれ変形φの微分方程式の形は、8.4.3項に紹介してあります。
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